マンション大規模修繕工事の進め方<その1> 理事会と修繕委員会について

初めて理事や修繕委員会となる方へ向けてマンション大規模修繕工事の進め方を3回に分けてご紹介する1回目の記事です。今回は大規模修繕工事とはどのような工事か、また、どのような流れで進めていくものかといった基本をはじめ、理事会の下部組織となる「修繕委員会」の設置について、実際の具体例を紹介しながら修繕委員の目線でご紹介していきます。

目次

マンションの大規模修繕工事。管理組合にとってのこの大きな取り組みは、区分所有者で構成する管理組合の理事会が主体となり推進されます。しかし、理事会は日常の維持管理やマンション内の問題解決などさまざまな業務や検討作業に携わっていて、手一杯であることが常。そこへさらに大規模修繕工事の検討業務が加わると、作業量が格段に増え、理事には大きな負担となってしまいます。

そこで、多くの管理組合では理事会の下部組織として、大規模修繕工事に特化した専門委員会(修繕委員会/大規模修繕委員会。以下、修繕委員会と記載)を設置し、業務をサポートしてもらいます。

今回の修繕成功magazineではこの修繕委員会の活動に焦点を当て、委員会ではなにをするのか、理事会との連携や分担についてまとめました。首都圏のマンション管理組合で取り組んだ事例も紹介しながら3回に分けてご紹介します。

 

マンションの大規模修繕工事とは

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国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」によると、マンション大規模修繕工事の周期は12年が目安となっています。実際には建物の状況により早めたり繰り延べたりすることがあり、特に近年では資材の耐久性や品質が向上し、18年周期とするマンションもあります。いずれの場合も大規模修繕工事の実施時期が近付くと、マンション管理組合の理事会は、大規模修繕工事を理事会が主導するのか、それとも修繕の専門委員会を設置して検討作業を委任するのかを決め、準備を開始するところから活動をスタートします。

●大規模修繕工事の具体的な工事内容については下記記事をご参照ください。
マンションの大規模修繕工事とは?工事内容と費用を解説

 

修繕委員会を設置しよう

理事会はマンション共用部分の維持管理や居住者の課題解決、近隣との折衝などの活動で常に忙しく働いており、ここに大規模修繕工事の業務――工事計画の策定、施工会社の選定、発注、契約、アフターメンテナンス対応――などが加わると作業量は大幅に増え、理事らの負担が格段に大きくなってしまいます。そこで、多くの管理組合では大規模修繕工事の検討に特化した専門委員会「修繕委員会」を設置し、理事会のサポートを依頼します。

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(出典:国土交通省マンション標準管理規約)

修繕委員会は理事会の下部組織です。パートナーとなるコンサルタントや施工会社を選定し、工事内容とスケジュールを検討し、理事会に提案します。理事会はこの提案を受けて最終決定を行い、大規模修繕工事を発注します。理事会役員は1年~2年で交代することが多いのですが、修繕委員会は輪番による引継ぎのロスを避け、一部メンバーを継続して検討を進める管理組合もあります。

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(出典:横浜市マンション管理組合サポートセンター事業マンション管理組合基礎セミナー資料より)

ここからは初めて修繕委員を務める人の参考になるよう、修繕委員会の活動を中心に説明します。理事会主導の場合も流れは同じです。「修繕委員会」を「理事会」に置き換えてお読みください。

 

大規模修繕工事の全体の流れとステップ

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(出典:財団法人経済調査会発行「大規模修繕の基礎知識」を編集)

マンション大規模修繕工事の全体の流れを紹介します。

①   大規模修繕工事の体制づくり
大規模修繕工事の実施時期が近付いたら、理事会は組合員の中からメンバーを募り「修繕委員会」を設置します。

②   パートナー(コンサルタント)の選定
修繕委員会は大規模修繕工事の成功へ向けて一緒に活動するコンサルタントを選任します。

③   建物診断・調査
コンサルタントや専門会社で建物の劣化状況を調査するほか、居住者にアンケートを実施して調査します。

④   修繕基本計画の検討
今回の大規模修繕工事で必要な工事項目の拾い出しと見積り金額を算出して修繕基本計画を策定します。

⑤   修繕詳細設計の策定
資金計画や基本計画などの詳細をまとめた「修繕委員会案」を理事会に報告し、必要に応じて総会に諮り承認を得ます。

⑥   施工会社の募集と選定
施工会社を公募し、書類審査、見積提出、プレゼンテーションや質疑の実施などを通じて審査します。

⑦   施工会社の内定、決議
修繕委員会にて施工会社の候補を決めたら、その結果と選考の経緯をまとめた「修繕委員会案」を理事会に答申。理事会は総会決議を経て工事請負契約を締結します。

⑧   工事説明会・着工の準備
大規模修繕工事のスケジュールなど詳細が固まったら居住者向けに工事説明会を開きます。

⑨   大規模修繕工事開始
施工会社に任せきりではなく、コンサルタントと施工会社と定例会や検査を通じて工事の進捗を把握します。

⑩   大規模修繕工事完了
大規模修繕工事が完了したら、竣工検査の後、竣工図書とともに建物の引き渡しを受けて精算します。

⑪   新たな維持管理へ
大規模修繕工事の成果を反映して長期修繕計画の見直し・更新を行います。次回の大規模修繕工事に向けて新たな維持管理をスタートします。

ここまでを読むと、〝修繕委員は建築工事に詳しい人でなければ務まらない〟と思われるかもしれませんが、実はそうでもないのです。
建築に関する専門知識のある人の他に、
・経理や法律、広報に通じた人
・居住者の声を取りまとめられる人
・〝一般人〟ならではの素朴な疑問を投げかけられる人
――などの参加が求められます。さまざまな年代や立場の人が進行を見守ることで、細かいところまで目が行き届き、運営が一層スムーズに進むもの。その結果、居住者全員が満足する大規模修繕工事を遂行することができるのです。

 

具体的な取り組み内容を解説 実際の管理組合の例

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ここまで大規模修繕工事と全体の進め方についてご紹介しました。コンサルタントや施工会社に任せきりにするのではなく、管理組合が主体的に活動することで工事が推進する(反対の場合はなかなか工事が進まなそうである)ことをイメージしていただけたのではないでしょうか。

次回の記事「その2・事例で見る修繕委員会の立ち上げ~施工者選定」では大規模修繕工事の体制づくり~施工会社決定までの具体的な内容を実際の管理組合の声とともに説明します。そして「その3・着工準備・工事中~完成・新たな維持管理へ」では、工事説明会・着工の準備~新たな維持管理への部分をご説明します。大規模修繕工事検討の進捗に合わせてぜひお読みください。

●その2
「事例で見る修繕委員会の立ち上げ~施工者選定」

●その3
「着工準備・工事中~完成・新たな維持管理へ」


本記事が初めて理事・修繕委員となられた方のご参考となれば幸いです。

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