注目トピック
マンション駐車場のよくあるトラブルや悩みとその解決方法
今回の『いい住まい』では、迷惑駐車に対して管理組合がどう向き合えばよいか考えます。駐車場内で事故や盗難が発生した場合や駐車区画が過不足する場合に、管理組合はなにができるでしょうか。空き区画が増えたマンションでは、EV(Electric Vehicle=電気自動車)充電器の設置やカーシェアリングなど新しいサービスの導入が居住者の利便性向上につながるかもしれません。
迷惑駐車トラブル
送迎や荷物の積み下ろしなど短時間の停車を除き、指定場所以外に無断で駐車する車があると、迷惑するのは本来の駐車場利用者だけではありません。ごみ収集の清掃車が作業できない、引越しや宅配便、工事、管理などの業務用車両が入れないないなど、マンションの管理に支障をきたすこともあります。また、救急車や地震・火事など災害発生時の緊急車両が入れなければ人命にかかわる事態に発展しかねません。
長時間または常習的に迷惑駐車が繰り返される場合、敷地内は公道ではないので警察に取り締まりを依頼することはできませんが、管理組合は早い段階で、何度も、断固とした姿勢を示す必要があります。気づかずに放置していると「ここなら無断で停めても大丈夫」と迷惑駐車が常態化する恐れがあり、「みんな停めているから」と次の迷惑駐車を誘引する原因にもなり得ます。
迷惑駐車への対策
迷惑駐車への対策としては
- 無断駐車されてしまう場所に「契約者以外の駐車お断り」「監視カメラ作動中」などの看板を設置して抑止する
- カラーコーンやバリカーを設置して停められないようにする
- 実際に迷惑駐車を発見した場合は「駐車ご遠慮ください」などの警告文を車のワイパーに挟んで注意を促す
といった対策が考えられます。
ただし、対応するにあたって注意も必要です。警告文を車体に貼り付けたり車両を自力で移動したりするのは、器物損壊に当たる恐れがありますので気をつけましょう。
それでも改善しない悪質な迷惑駐車に対しては、車両の持ち主を特定して警告書を送付する方法があります。迷惑駐車のナンバープレートと駐車状況が分かる写真を撮り、日時を記録してください。普通自動車は陸運支局・自動車検査登録事務所に、軽自動車は軽自動車検査協会に問い合わせて所有者情報を開示してもらい、配達証明をつけた郵便などで文書を送付して改善を申し入れたり、実際に被害を被った場合は損害賠償請求も行うこともできます。
このような措置を取ることを管理組合で決めたら、居住者にも周知し、迷惑駐車の予防に協力してもらいましょう。迷惑駐車を繰り返すのは、外部の第三者のみでなく居住者、または居住者の関係者のこともあります。マンション内の掲示板にお知らせを掲出することで、一定程度の抑止効果が期待できます。
マンション駐車場内での事故
駐車場内でよくあるトラブルは①他の車を傷つけた②通行人と接触した③フェンスやコーンを破損した④機械式駐車場の操作を誤った―などでしょう。事故は当事者間で解決するのが原則で個人間の事故について管理組合は責任を負いませんが、設備や備品の破損については下記のような対策が可能です。
<備品破損への対応例>
- フェンスやコーンなど駐車場内の備品を破損した場合は、管理会社または管理組合に報告し復旧対応を行ってもらう旨を周知しておく
- 事故の連絡があった場合には車の所有者が加入している「対物賠償保険」「車両保険」が使える場合もあることを知らせる
<機械式駐車場のトラブルへの対応例>
- 機械トラブルが起こらないよう正しい使い方について周知しておく
- トラブルが発生してしまった場合の対応方法を周知しておく
ほかにも、機械式駐車場のセンサーが異常を感知し、機械が緊急停止してしまうことがあります。その場合はマンション管理会社、または操作盤に示してある駐車場のメンテナンス会社に連絡して復旧してもらってください。
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機械式立体駐車場の利用者が機械操作を誤ったため駐車場全体がストップし、モーターの取り換えが必要となる事故が発生しました。人的な被害はありませんでしたが、新しいモーターを制作し復旧するまで約1カ月。困ったのは、出庫できない車と入庫できない車です。
操作を誤った当事者から報告を受けた管理組合は、直ちに駐車場の操作盤に「お知らせとお詫び」を掲出するとともに、登録台帳で駐車区画の利用者を調べ、個別に状況を説明しました。出庫できない人にはレンタカーを、入庫できない人には近隣のコインパーキングを借りて使ってもらいました。
かかった費用は、レンタカーのチャイルドシート使用料も含め、操作を誤った当事者が全額を負担。当事者が加入していた保険で全てカバーできましたが、利用者全員が気の休まらない1カ月となってしまいました。
マンション駐車場内での盗難
車上荒らしなどの盗難が発生した場合も、管理組合は原則責任を負いません。警察の捜査に協力して防犯カメラの画像を提供するなどにとどまります。駐車場の利用者には、車内に貴重品を残さないこと、ステッカーなどでドライブレコーダーの常態監視をアピールすることなどの予防策を周知しておきましょう。
駐車場の不足
日常的に車を利用する人にとってマンションの敷地内に駐車場があると便利ですが、駐車場の区画が足りなくなってしまうこともあります。
マンションの駐車場付置(設置)義務台数は、ほとんどの自治体で決められており、同じ市内でもマンションが立地する用途地域によって設置すべき台数(駐車区画数)の割合は異なります。例えば横浜市 の駐車場条例(附置義務駐車場)をみると、延べ床面積が2,000平方メートル以上のマンションは用途地域によって最小で全住戸数の10%以上、設置することとしています。
例えば延べ6,000平方メートル・総戸数100戸のマンションが商業地域にある場合は10台分以上の、住居地域にある場合は30台分以上の駐車区画を確保することが義務づけられています(1戸当たりの面積を30㎡以上とした場合)。
出典:横浜市建築基準条例
駐車場利用希望者数に対してもともと駐車区画数が不足している場合や、車高や車幅の制限により機械式駐車場に駐車できない車種の利用者が多いマンション、車を2台以上保有する世帯が多いマンションでは、駐車場が常に不足状態となっていることがあります。
<駐車場不足への対応例>
- 管理組合は駐車場の「空き待ちリスト」を作成
- 区画が空いたら利用希望者で抽選会を開く
- 各戸に駐車場の使用権がある場合には駐車区画を保有していても車を手放した方と利用希望者をマッチングする
- 平置き/機械式最上段など広いスペースの利用者で区画の交換や貸し出しが可能な方がいないか調整する
駐車場は共用部分にあたるため、これらの対応は管理規約にも関わってきます。駐車場の管理規約を確認し、必要に応じて規約の変更も行いながら先着順か抽選か、どのように割り当てるのが良いかなどを検討してみましょう。
マンション駐車場利用者の減少
駐車区画の不足とは反対に、利用者が減って空き区画が増えているマンション駐車場もあります。空き区画が増えたら備蓄倉庫など別の用途に転用する、機械式駐車場なら撤去するなどの利活用が思い浮かびますが、専用使用権の有無に注意が必要です。
① 専用使用権のない駐車場(管理組合が貸し出す駐車場)
国土交通省の『平成30年度マンション総合調査』によると、最も多いのは管理組合が希望者に貸し出す形のマンションです。この場合は利用している人だけが駐車場使用料を支払う形となりますので、空き区画が増えると使用料収入が減り、メンテナンス費用の不足が懸念されます。
機械式駐車場なら耐用年数や今後の収支計画を考慮した上で撤去し、埋め戻すことも考えられます。整地して平置きの駐車区画を設けたり、空いたスペースをコインパーキングとして貸し出したり、洗車スペースや電気自動車・ハイブリッド自動車のEV等充電設備の設置スペースに転用したりすることも可能です。
② 専用使用権のある駐車場
マンション分譲時に1世帯1区画ずつ駐車場を用意し、区分所有者が専有使用権を持っているマンションもあります。この場合は利用の有無にかかわらず区分所有者から使用料を徴収するので、駐車場を他の用途に転用するには権利関係の調整が必要となります。
いずれの形態でも
- 駐車場使用料を修繕積立金に組み込んでいる場合、駐車場区画数が減ると大規模修繕の積立金が当初見込みより減ってしまう
- 機械式駐車場は1区画のメンテナンスに年間数十万円かかることから、空き区画が過半となると利用維持が難しくなる
- 機械式駐車場を撤去するにも多額の費用がかかる
- 外部利用や撤去には管理規約の変更を総会で決議する必要がある
などの課題があります。空き区画数が増加傾向にあるマンションでは、あらゆる角度から有効活用に向けた検討が必要です。それでは、マンション内駐車場の空きスペースを活用した事例を見てみましょう。
空き区画の活用例
シェアリングサービスの活用
近年では駐車場の空いた区画を借り上げて時間貸しで外部に貸し出すサービスや、カーシェアリングサービスを導入するマンションがじわりと増えています。背景には自家用車を保有しない世帯や免許を返納し車を手放す世帯の増加があり、それに伴いレンタカーやカーシェアリングサービスの利用者数が伸びているようです。
例えば、時間貸し駐車場やカーシェア事業を手掛けるパーク24グループ(https://www.park24.co.jp/)のホームページを見ると、マンションの居住者用駐車場を駐車場にした事例などが紹介されています。
このような新しいサービスを導入することで空きスペースが収益スペースとなり、無断駐車対策にもなりそうです。マンション居住者の意向を調査し、希望の多いサービスの導入を検討してみてはいかがでしょう。
カーシェアリング「タイムズカー」を導入したマンション
EV充電器の設置
空きスペースの転用を考える際、EV等充電設備の設置も選択肢になります。
地球温暖化対策の一環として、国は電気自動車やプラグインハイブリッド自動車といった次世代自動車の普及を促進しており、東京都や神奈川県、横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市などは、充電設備を設置するマンションや事業者に費用の一部を補助しています。導入を検討する管理組合は、自治体や一般社団法人次世代自動車振興センターのホームページで条件を確認してみましょう。工事着工前の申請が必要です。
出典:横須賀市ホームページ
マンション駐車場内の迷惑駐車や事故、盗難を予防すること、空き区画が目立つようであれば有効活用方法を検討することは、マンションのお手入れの一環です。建物と同様に駐車場もきちんとメンテナンスすることで、マンションライフはより快適になります。先の修繕のことも視野に入れた日常管理を行いましょう。